株式会社サイバーエージェント 取締役 人事統括
曽山 哲人様
TETSUHITO SOYAMA
業績ファースト&主役感。曽山流マネジメントスタイル。
井上
先ほどの話、評価制度の運用に関してなんですが、給与とか昇給にリンクしていたりすると、制度をうまく利用する人が出てきませんか?たとえば目標設定時には低めに申告しておいて、達成は高めにするとか。そうすると、賞与をたくさんもらえてしまう。
曽山
ありがちな話ですね。
井上
でもそうした動きって、フェアじゃない。それを許すか許さないか上司によって違いも出て、不公平感が広がってしまいます。そのあたりの調整はどうしているのでしょう。数値だけを重視しないようにしているとか?
曽山
目標設定はざっくり、方向性さえ決まればOK。数値を細かく決めないようにしています。
井上
そうすると、件数など数値を共有するわけではない?
曽山
数値ではなく、人間としてどうであったかを重視します。この半期はこうしたところが良かったね、でもここがいまひとつだったから、もっと伸ばそうね、期待してるよ・・・そうしたフィードバックを行います。つまり評価を伝えること、イコール育成だという認識です。
井上
なるほど、共感できます。
曽山
評価は育成の場にしたほうが絶対いいです。どうしても裁判にしがちなので。
井上
そうそう、わかります。
曽山
私は昔、裁判をやってばかりいました。
井上
裁判っぽくなってくると、評価制度そのものへの不満が出て、いろんな人から突っ込みが入ります。一方で人事サイドも仕組みを作って批判に対抗しはじめるので、制度がどんどん細かくなっていく。
曽山
そうそう、たしかに。
井上
『こういう仕組みを入れています、こんどは別の仕組みで改善しました』とか、いろんなものを入れてきて複雑化させてしまったり。これは何のためにやっているかと言えば、誰からも文句を言われないためで、社員のためじゃない。世の中の人事は、こうした不毛なことを行っているのではないかと感じています。
曽山
いや、おっしゃる通りだと思います。なぜそうなるかと言えば、“説明責任ファースト”になってしまっていうんですね。
井上
そのあたりを人事のトップがわかってる会社って、幸せだと思います。
曽山
私は前にもお伝えした通り、最初は“社員ファースト”で進めてしまったんですよ。もっと言えば、“自分の使命感ファースト”ですね。本当は自分の使命感なんてどうでも良くて、業績が上がってみんなが幸せになればいい。そこを人事部長の就任後に、私は学びました。
井上
そうすると、会社全体のモチベーションを上げる施策というのは、そこにどうやって入れ込んでいくのでしょうか?
曽山
評価や報酬より一段高い視点に、“主役感”という言葉を置いています。
井上
主役感、ですか。どんどんいろんな言葉が出てきますね。
曽山
はい、職務が営業だろうとスタッフだろうと、またアシスタントの役割であろうと、自分が意志決定して、自分が人生を決めている。そういう手応えがあったほうが、楽しいと思うんですね。全部を誰かに決められてしまう人生は嫌なもの、それは明快だと思います。だから与えられた業務の中で、主役感をどれだけ持ってもらえるか。そこをすごく大事にしています。
そうした前提があるからこそ、目標は大きな方向性だけ決めるという発想になり、そこさえ決めれば、あとの進め方は自分で考えてもらう。そのプロセスで主体性が生まれ、主役感を感じされるようになるわけです。結果として、伸び伸びと働く人が増えていきます。
井上
それはどんな職種やポジションでも共通ですか?
曽山
共通です。全社員に主役感を持ってもらえるように努力してます。100点満点とは言えないですけど。
井上
その主役感も、経験を通した気づきから生まれた?
曽山
そうですね。自分から何をやりたいか言わせるというのは、つまり、自分の人生を自分で決めること。その意志が、主役感の基礎になります。
井上
ただ仕事を離れて家に帰ると、普通の人間じゃないですか。個人の幸せと会社での幸せ、それはリンクさせるようにしているのでしょうか。具体的な施策を講じているとか・・・。
曽山
そこはあまり意識していないです。基本的には仕事において楽しさを求めていくようにして、それを実現する上で家族へのヘルプが必要であれば、支援するようにしています。たとえば介護とか、子育てとかですね。トータルハッピーというか、公私ともに幸せになってほしい気持ちはいつもあります。
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