「パールグローイング」という情報探索手法をご存知でしょうか(※1)。
”検索スキルの高いユーザーは、インターフェースとは無関係に、パールグローイングと呼ばれる特殊な戦略を用いて拡張を行う。良さそうなドキュメントを一つ選んで、そのコンテンツとメタデータの中からキーワード向きの語句や手がかりを探しだす手法だ。”
― 『検索と発見のためのデザイン』
聞きなれない言葉ですが、検索が得意な人なら無意識にやっている行為です。検索結果やドキュメントのテキストから重要語句をコピーして、キーワードに追加したり、入れ替えたりしていることと思います。
検索スキルの高い人しか使いこなせないなんてもったいないです。この概念を発展させ、具現化したらどうでしょうか。
初めから重要語句を検索結果へのリンクにしておく方法です。
たとえば書籍を検索した時に、本のタイトルだけでなく、著者名もリンクにしておくことで、ワンクリックでその著者名をキーワードにした検索結果に遷移することができます。ECサイト運営者側にとってはクロスセルを促すことにもつながります。
情報量の多い商品詳細ページでは、より多くのパールグローイング用リンクを提案できます。プレーンテキストで書かれていることの多い説明文や著者情報などは特にその候補でしょう(※2)。下図のような商品説明の場合、特徴語がリンクになっている右側のほうが使いやすいですよね。
自分自身でパールグローイングできるユーザーであればいいですが、何のキーワードで検索すればいいか分からない方もたくさんいます。
「検索からドキュメント」というメインストリートだけでなく、「ドキュメントから検索」という裏道の整備も行うことで、検索インターフェースはより使いやすくなります。リンクにできるメタデータは何があるのか、説明文中の特徴語は何かといった視点でぜひ一考してみてください(※3)。
パールグローイングをみんなの手に!
注釈:
※1:「パールグローイング」は図書館情報学用語で、英語では「Pearl Growing」と書きます。直訳すれば「真珠の成長」という意味ですが、貝の中で真珠が大きくなっていくことを、ドキュメントから特徴語を見つけ出し発展検索していくメタファーとして用いられています。
※2:有名な事例ははてなダイアリーでしょう。はてなダイアリーでは書き手が何もしなくても、はてなキーワードに登録されている語句が自動リンクされ、文章に埋め込まれます。クリックするとはてなキーワードページに遷移し、その語句の解説を読めるほか、その語句を使用しているブログが一覧表示されます。APIも出ていますね。これも一種のパールグローイングといえます。
※3:闇雲になんでもかんでもリンクにすればいいものではありません。ヒントは検索セッションログにあるはずです。ログのなかから、コアユーザーしか扱えていない専門用語や、誰もが知っている有名人名などがないか目を凝らして探してみてください。
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