元 楽天株式会社 取締役 常務執行役員
カーディナル合同会社 代表社員
安武 弘晃様
HIROAKI YASUTAKE
楽天の強みは、マーチャントの工夫が生きる「バザール形式」。
ロングテールの製品がある国なら、ビジネスモデルは成立する。
井上
安武
もちろん解決したい課題です。結局はカタログなんですね。世の中に存在するのかしないのか、カタログがある分野であれば、昔からJANコードがあります。でも食品だとマスターがありません。
楽天も出品するときに、商品説明文にJANコード入れて下さいとお願いしているんです。コードさえあれば、そこに引っかけて商品を認識できますので。問題はコードがないエリア、リテール市場では大多数のところでどうするか、そこが技術の壁だと思います。
井上
安武
楽天も独自のカタログをつくるプロジェクトをずっとやっていて、技術研究所の大きなテーマになっています。入力される商品の説明文を自然言語で解析して、これとこれは同じらしい、ということをずっとやっています。でも、いまだになかなか綺麗にはならないようです。
井上
安武
楽天はバザール形式なので、それをやっていないのが楽天らしさであり、だから変な商品がたくさん売れるんですよね。アマゾンは堅いものしか売れないので。
井上
安武
わかりやすいのは、蟹とチーズケーキのセット、というのが飛ぶように売れていた現象です。そのセットって、分類できないんです。北海道特産品ではありますが。「先に型番決めてください」としてしまうと、こうしたクリエイティビティを削いでしまうわけです。
楽天のビジネスモデルはエンパワートメント・モデルなので、店舗さんが好きに自由にやることでお祭り的に盛り上がっていきます。それがビジネスモデルです。根っこにかかるところなので、全部紋切り型に同じようには出来ないところがあります。
井上
安武
それが強みであり、アイデンティティでもあります。
井上
安武
そこは難しいところです。今のところ、上手く行っていないというのが客観的な事実だと思います。でも、たとえばフランスに行けば、山ほどのチーズがあります。ドイツに行けば、同様にハムがあります。それらを考えると、楽天のビジネスモデルは成立すると思います。
ロングテール型で、商品は少ないけど欲しい人が一定数いるというマーケットは、絶対あると思います。それに楽天のアプローチが上手く行くかは別の話になりますが。マッチングで考えると、究極のデータはGoogleです。Googleは商品に限らず、有象無象の情報をオーガナイズしてマッチングするわけで、ロングテールは突き詰めるとGoogleになると思います。
ただGoogleもプロダクトカタログみたいなものを試していますが、うまくいっていないですね。そこは誰もまだ綺麗に解決はしていないと思います。そこにニーズはあることは間違いないですが。
アメリカはアマゾンに近くて、消費者はロングテールをそこまで求めていないと言えます。どこのショッピングモール行っても置いてあるものはそう変わらない。そうした大量生産、大量消費の国もあります。
井上
安武
フランス、スペイン、UK、ドイツ、オーストラリア・・・シンガポール、インドネシア、マレーシア、タイ。あとはアメリカ、ブラジル。東南アジアは撤退しますが。
井上
安武
いま、出し忘れましたが、台湾ですね。ゼロから初めて2番か3番のポジションにつけてます。Yahoo!ショッピングが一番ですが。いい楽天モデルを体現していて、上手く変わっているところの一つです。
井上
安武
価値観自体は機能しているのでしょうが、それが通用するマーケットサイズかどうか、つまり投資に見合うかどうかだと思います。
井上
安武
アマゾンモデルを模倣している、たとえばインドのフリップカートとか、まさにそうしたパターンだと思いますね。
井上
安武
一般的な理由は山ほどあるとは思いますが、個人的な意見で言うと、日本発のみならず、他の国でも同じ状況です。たとえばフランス発で成功しているサービスって、思いつかないですよね。実はグローバルで成功しているサービスは、ほとんどシリコンバレー発。その差は資本力だと思っていて、あそこだけが強い構造になっています。
また中国企業は国内マーケットで閉じており、世界はグローバルと中国、2種類に分かれています。グローバルはシリコンバレー系の企業に席巻されていて、中国は地球上の別の国として存在していると言えるでしょうか。
井上
安武
そういう構図に見えています。その差は何かと言えば、人間の能力と言うより、資本の回し方だと思います。
井上
安武
もちろんそうです。Eコマースにもこだわっていないので、金融業とかもグローバル展開していますし、Viberも買収しましたが、アカウントベースで7億人くらい使っているんじゃないでしょうか。
つきつめていくと商売は簡単ではないので、成功するまでいろいろやるという大ざっぱな結論にしかならないと思います。
井上
安武
別ですね。
井上
安武
国の法制度がバリアになっています。
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