ヤフー株式会社 代表取締役社長

宮坂 学

MANABU MIYASAKA

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アップロード側は無料、それがインターネットの本質。

井上(ユニバーサルナレッジ)
井上

ここでショッピングをテーマにお話を伺います。Yahoo!ショッピングにおいて、出店者からお金をいただくのは止めて無料にしたのは、どういう判断に基づいてのことだったのですか。

宮坂様
宮坂

その方式で大成功したモデルがあると、孫さんからすごいインプットを受けていてました。「タイミングが来たらやるべきじゃないの?」と言われていたんですね。そしてそのタイミングが来たというわけです。

もともと、無料の根底にある理念は素晴らしいと思っていました。インターネットではホームページをネット上にアップするのに出店料など取りませんし、だからあれだけ流行ったのだと思います。情報を発信するのにいちいち家賃を取ってどうするのか、それでは広がるはずもありません。ホームページを作る、ブログに何かを書く、商品を売る、それらは全てインターネットを作る側に回る仕事です。それであれば料金的な敷居を低くしてあげたほうが、インターネット全体が大きくなると思います。ダウンロード側のユーザーよりも、アップロード側を増やしていくことが、インターネット全体を増やしていくことにつながる。その結果、いちばん恩恵を受けるのは我々になるはず。そうした考えに基づいて、ヤフーはアップロード側を増やす方向を目指すと決めています。

井上(ユニバーサルナレッジ)
井上

私はコンシュームとプロデュースと呼びますけど、ユーザーはコンシュームしているだけなので、我々はプロデュースする側を厚くしていきたいと考えています。

宮坂様
宮坂

私も強く同意します。振り返れば、私が最初に編集プロダクションに入ったのは、デスクトップパブリッシングの登場が大きかったんです。DTPを知って、雑誌づくりのハードルが下がると確信しました。雑誌は大きな会社でないと作れなかったのが、DTPなら数人で本が作れると。もともと小さな会社が好きだった私にとって、好都合でした。ただ実際にやってみると印刷代がかかり、目論み通りにはなりませんでしたが。

インターネット見て最初に期待した点も、方向性としては同じですね。自分が発信元になり、言いたいことが言えるとワクワクしました。

大企業らしく、大きなことをやっていこう

井上(ユニバーサルナレッジ)
井上

小さな会社が好きだったのに、ヤフーは大きくなっちゃいましたね(笑)。そこはどう感じてますか?

宮坂様
宮坂

昔の話になりますが、大学の時、学費を稼ぐために休学してバーテンとかやっていました。店は祇園にあって、当時はバブルだったので大企業のビジネスマンたちが接待でよく来てました。私はそれがすごく嫌で、「会社の金を使いまくって何やってるんだ」、と。うちの親はコツコツ型の人間だったので、一晩ウン十万とか使って、京都で呑んで奈良までタクシーで帰ろうとか、もう許せない!と思ったわけですよ(笑)。当時の人気企業に勤めていた人たちですが、私はこういう生き方は耐えられないと決めつけてしまいました。若かったので、大企業はみんなそうだと思い込んでしまったんですね。実際は会社によってまちまちであり、企業規模に比例するものでもありません。でも、当時はそうしたステレオタイプな見方をしていました。

また現実的には、大企業は社内調整など面倒くさい部分があってストレスを感じますが、小さい会社にもまた別のストレスがあるんですよ。たとえばヤフーに入った時のことです。前の会社で5月31日まで働いていて、6月1日が日曜で、2日からヤフーに出社したわけです。すると、5月31日は電話してもアポが取れなかった人が、6月2日になってヤフーを名乗ると会ってくれるわけですよ。

井上(ユニバーサルナレッジ)
井上

へえ、そんなものですか。

宮坂様
宮坂

私は何ひとつ変わってない、たった24時間経っただけ。なのに向こうは会ってくれるわけです。名刺で仕事をするなとは言いますが、現実的には名刺の違いは非常に大きい。以前だったら担当者に会うだけで半年かかることもよくありました。どうやって担当にたどり着こうか、それはそれで面白い面もありますが、大変であることは間違いない。企画はあっても、コンペに参加できないとか、そもそも土俵に上がれないわけです。大きな会社は社内調整が多い反面、意志決定できる人とパッと会えたりとか、事を起こすときは会社のリソースを使って大きく始められるとか、メリットもたくさんあります。どちらのビジネススタイルを好むのか、選択の問題と言えますね。

井上(ユニバーサルナレッジ)
井上

小さくても社会に認知されるようなエッジを持ち、人にいつでも会えるような環境をつくる、というスタイルは難しいでしょうか。

宮坂様
宮坂

自分自身が成長してインパクトのあることをやりたいと思った場合、やっぱり大きい事案を引き受けて、大きいが故にやれることをやるべきではないでしょうか。大きい会社が「うちベンチャーですから」というのは無理があるし、大企業は大企業らしく、大きな事をやればいい。大きい会社しかできないことは大きい会社が、小さい会社は小気味よく。そんな役割分担で行けばいいと思います。

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