対談TALK

そういえば、後任としてやりやすかったことが、もうひとつありました。社長交代を発表した記者会見の時のことです。井上さんが、『ヤフーはスマホに行かなければいけない、でもオレはスマホは使わないし、電源も切りっぱなし。よくわからないから、君たちがやれ』と振ってくれたんです。
　
それですごく助かりました。前任の超人がギブアップしたなら、ゼロからスタートするしかないぞ、となるわけです。あえてそうした物言いをしてくれた、井上さんの優しさだったと確信しています。

普通、記者会見の場で、そんなこと言わないですよね。

あえて我々が動きやすいように花を持たせてくれたわけです。普通のトップなら自分の功績を主張して辞めたがるものですし、それだけの事実もある。それなのにあえて綺麗に幕引きをしなかった。これはこれからの人へのギフトであったと受け止めています。

理詰めで考え抜く人が、あえて言うわけないですよね、そんなこと。

余計なことですよね、ほんとうは。

明らかに、宮坂さんがやりやすいように環境を作ってくれた。後々、そこだけが変に一人歩きしてしまいましたけど。

もともとメディア対応は慎重で、見出しになるフレーズなんて絶対に言いませんでした。ところが横で聞いていて、「あれ！？これ、絶対見出しになるぞ！」と。ひょっとしたらワザと言っているのかなとすぐ思いました。

もう、絶対そうですよ。

井上さんは、そもそもスマホだって普通に使っていました。実は井上さん、モバイルを使い始めたのはものすごく早かったんですよ。97年頃には、ソファーに仰向けになってノートPCを使っていましたから。

そうそう、よく仰向けになっていましたね。

メールもいまのスマホで打ったみたいに、短かった。『はい』とか、『ダメ』とか、『バカ』とか。10ワードもないものばかりで、日本のモバイルの先駆けだったと言えるほどです。

井上さんから教えていただいたことを胸に刻んで、お互いに日本のネット社会の発展に貢献して行きたいですね。今日は、ありがとうございました。