株式会社サイバーエージェント 取締役 人事統括

曽山 哲人

TETSUHITO SOYAMA

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社員500人規模の時代、人事本部長に。でも最初は空回り。

井上(ユニバーサルナレッジ)
井上

さて、営業時代に新しいスタイルを身に付けられてから、いよいよ人事へとなる流れですか?

曽山様
曽山

そうですね。

井上(ユニバーサルナレッジ)
井上

ご自身で希望されたのですか?

曽山様
曽山

いえ、当初はこのまま営業でがんばりたい、という思いでした。社長の藤田に将来を尋ねられた際も、「営業でナンバーワンを取ります!」と宣言していたくらいです。でもその後に役員合宿があり、経営課題として人材の定着が議題に上がりました。当時は離職率がかなり高く、対策として人事本部の設立が決定されたんです。

井上(ユニバーサルナレッジ)
井上

そこでご指名を受けてしまった、と・・・!

曽山様
曽山

はい、人事本部のトップに誰が良いかと議論が行われ、『曽山君だったら営業として他部署へのパイプもあるし、いいんじゃないの』となったようです。

井上(ユニバーサルナレッジ)
井上

営業でナンバーワンを取ります!と宣言した後ですね。

曽山様
曽山

ええ、役員合宿が終わった後、もう1回、藤田が私のところに来たんです。社長室で面談することになり、『人事部門を強化しようと思っていて、そこの本部長になって欲しいんだ』と言われました。

井上(ユニバーサルナレッジ)
井上

気持ちの整理はすぐつきました?

曽山様
曽山

「わかりました、すぐやります!」と答えました。ご指名いただいたら嬉しいし、何にしてもすぐ受けようという気持ちでいましたから。

井上(ユニバーサルナレッジ)
井上

その当時の社員数は、どのくらいでしたか?

曽山様
曽山

400人から500人くらいはいました。

井上(ユニバーサルナレッジ)
井上

もう、それなりの規模になっていたんですね。それで離職率はどのくらいだったのですか?

曽山様
曽山

25%はありました。

井上(ユニバーサルナレッジ)
井上

それは高いですね・・・!単純計算で4年経ったら、全員入れ替わってる。

曽山様
曽山

そうです、危機的状況でした。

井上(ユニバーサルナレッジ)
井上

それで人事本部長になって、何をどう変えようと考えたんですか?

曽山様
曽山

実は最初のうちは、けっこう空回りしたんです。半年くらい、「やっぱり人事は合ってないのかな、営業に戻らせてもらえないかな」と思ってしまったくらいです。なぜかと言えば、経営から望まれてもいない施策をたくさんやってしまい、評価をもらえなかったんです。自分としては現場のためにと思って手を打っても、経営からは無反応。「あれ?」と思いました。

井上(ユニバーサルナレッジ)
井上

たとえばどんな策を打ったんですか?

曽山様
曽山

育成プログラムを作ります、評価制度を変えます、とか。実際に現場から不満があったので、必要だと信じ取り組みました。でも、意外と褒められない。でも、そこから分岐点があったんです。

ある役員から面談に呼ばれたときのことです。『人事本部長の立場で、ある事業部長に面談をしてもらいたい』と頼まれたんです。メンバーへのあたりがキツいので、改善するよう率直に伝えてほしいという趣旨でした。私はこう見えても気を遣う方なので、その人を嫌いになりたくないし、嫌われたくもない。だから丁寧に対話して、状況をわかっていただきました。その方は結果としてお辞めになったんですが、特に揉めたわけでなく、逆に『踏ん切りが付きました』と感謝されたほどです。実はこの時に、大きな気づきを得たんです。

井上(ユニバーサルナレッジ)
井上

というと・・・。

曽山様
曽山

依頼者であった役員から、すごく感謝されたんです。その方が辞めて以降、幸いにも現場の雰囲気が変わり、チームがまとまりました。そして売上も急上昇。それを役員がすごく喜んだわけですね。そこで、自分の思い違いに気づきました。いままでは自分のやりたいことを経営のためだと思って勝手にやっていた。それは現場から見たら決して間違いではなく、必要なことではありました。でもちょっと待って、経営からすると、優先順位は違う、となるわけです。

井上(ユニバーサルナレッジ)
井上

今回で言えば、事業部長への面談の方が、より優先順位が高かった、ということですね。

曽山様
曽山

はい、まさに。そこからの私は、人事のスタンスは“経営の課題解決が一番”であると設定し直しました。会社である以上、とにかく課題が尽きず、人事でも採用や研修など無限に何かを解決し続けなくてはいけません。その中で何を先に着手するかと言えば、経営課題の解決により近い人事課題となります。言ってみれば、経営戦略と人事戦略を符合させる、マッチさせるということが、大事なんですね。

井上(ユニバーサルナレッジ)
井上

人事を通して経営課題の解決をはかる、それが役割。素晴らしい気づきですね。

曽山様
曽山

ただ私の場合、完璧主義者に加えて八方美人が足されるので、「結果は出したい、でも嫌われたくない」という矛盾との闘いになります。でもそれを乗り越えることで燃えるんですが。

井上(ユニバーサルナレッジ)
井上

嫌われないように行動するとストレス溜まりませんか?

曽山様
曽山

めっちゃ溜まります。ただ、嫌われてもいいや、と居直ってしまうと乱暴になるとも思うんです。特に人事関連の施策になると

井上(ユニバーサルナレッジ)
井上

たしかに人事は繊細ですね。

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