株式会社バルーン 取締役CXO

本橋 徹

TETSU MOTOHASHI

1 / 3

感性で市場をつくる。利便性ではアマゾンに飲み込まれてしまう。

本橋様
本橋

食材のECは、実際にやってみてそんなにやる人がいないのが理解できました。稼ごうと思ったら、EC以外をやったほうが絶対に効率的なんですよ。粗利が良いですし、参入障壁も低い。一方で食材は管理コスト等が必要以上にかかるだけでなく、専門性が非常に高く、勉強にも時間がかかる。

井上(ユニバーサルナレッジ)
井上

もともと本橋さんが携わっていたのって、Eコマースの中でも集客だけですよね。だけど実際にはどうやって品揃えをするとか、誰に売るのかとか、いろんな要素があって、やってみたら大変だったということですね。

本橋様
本橋

私たちが売っている食材って、低価格訴求ではないんですよ。どちらかと言えば、高い。すると検索している人には、ヒットしない可能性が高いんです。ハンバーグとかレトルトのワードで検索している人が、まさか5000円するハンバーグをレコメンドしてくるとは思ってないでしょう。私たちがマーケットプライスより高いものを売るのであれば、検索じゃない方法でニーズを捉える必要性があるんです。

井上(ユニバーサルナレッジ)
井上

そのあたりはバルーンのビジネスの話になってくると思うのですが、食材を売ると言ってもいろんな狙い所があるじゃないですか。そもそもバルーンは、どんなマーケットを狙って作ったのでしょうか。

本橋様
本橋

バルーンがなくなって困る人は誰で、困る瞬間ってどんな時だろうね、とよく話しています。去年の5月か6月、CEOとビジネスモデルについて検討している時に、食材のEコマースについて検証したんですね。まず主流としてあるのは、栄養素が高くてオーガニックで、ご家族がいるならこちらのほうが良くないですか、という提案です。一方でネットスーパーは、店頭にあるものを普通にお届けします、というスタイル。前者はスーパーにない栄養素のものを、後者はスーパーをご自宅にという利便性において共通しています。

井上(ユニバーサルナレッジ)
井上

なるほど、たしかに。

本橋様
本橋

でも、もっとアパレルとか他の産業に目を向けたとき、利便性だけじゃなく感性で選ばれている業界もあるよね、という話になりました。利便性の分野はおそらくアマゾンなどの先行大手企業がビジネスをさらに進化させていくので、今から取り組むテーマとして攻めようとしても粗利が出ないんです。“最速のロジスティクス”と“最強の品揃え”と“見たことのないレコメンデーション”を自分たちで追随できれば利便性で闘ってもいいですが、そのイメージは湧きませんでした。

井上(ユニバーサルナレッジ)
井上

いまのEコマースに共通する課題ですよね。

本橋様
本橋

それで感性のほうから見た場合、買いたくなる切り口、つまりストーリーがオーガニックやヘルシーよりも、もっといっぱいあるんじゃないかと。「オランダの最先端の農技術を使った初めての米です」と言われると、どんな味なんだろうかとか、「このアイスブリュレは日本でいちばん幸せな牛から獲れたミルクで作りました」とか、そう言われてみると1回は食べてみたいなという切り口が無数にあります。それが当初のコンセプトになりました。

井上(ユニバーサルナレッジ)
井上

ある種、外食に近い感じでしょうか。

本橋様
本橋

そうです。食へのレジャー投資ではないですが、週末に家族で何しよう、動物園に行こうか遊園地にしようかという時に、オプションのひとつとして「食材を取り寄せてホームパーティをしよう」があってもいい。タワマンではフリースペースを予約して食材を持ち寄って、というライフスタイルも出てきています。そうしたレジャー的なシーンにアクセスできる食材なら、別にアマゾンである必要もないんです。

井上(ユニバーサルナレッジ)
井上

そうしたお客さんがこういうシーンで使って欲しい、という設定から入っていったわけですか?

本橋様
本橋

CEOの志水と私のベースは違うとは思います。彼の場合は食をやりたかった人なので、食の見せ方や喚起の仕方について、私には見えていないところまで見えていた気がします。私の場合は単純に先行大手企業ではやらないやり方って、何があるのか。感性の領域、感性のEコマースって何なのか、を考えていました。

1 2 3

ユニナレ対談