元 楽天株式会社 取締役 常務執行役員
カーディナル合同会社 代表社員
安武 弘晃様
HIROAKI YASUTAKE
楽天イーグルス優勝とスーパーセール、
ふたつの大イベントが、技術の現場を鍛えた。
井上
検索以外に、重要な位置づけのものはありますか?
安武
要素技術で例を挙げるのは難しいのですが、パフォーマンスとスケーラリビティなんですよね、語ると面白いのは。いちばん印象に残っているのが、楽天イーグルスが優勝したときです。
あのときは、日本全体のインターネット・トラフィックの、おそらく15%くらいが集中しました。
井上
それ、落ちました?
安武
落ちました。
井上
ですよね。
安武
ピークトラフィックは、災害時なみ。いかに止めないかっていう状況でした。
井上
いまでも楽天のスーパーセールでしたっけ、そういうときの対策って、相当やるわけですか?
安武
相当やりますね。ただイーグルスの優勝で培ったノウハウで、いまはどんなトラフィックが来てもおおむね、さばけるようになりました。
井上
では、セールで落ちるということは、もうない?
安武
最初の頃は落ちまくっていましたが、いまはないですね。完全にさばき切れたのが5回目か6回目のセールの時で、その後にイーグルスの優勝が偶然来ました。スーパーセールの経験なくしては、イーグルスの時のトラフィックには対応できなかったと思います。
井上
トピックスは、そこですね。
安武
もうひとつありまして、システムの観点から楽天のビジネスモデルを大きくしたという意味では、スーパーポイントが挙げられると思います。スーパーポイントを最初からEコマースに依存しないように、システム設計をかなりきれいにつくって、独立させておいたんですね。それがあれだけエクスパンションしても対応できたというのは、システムのアーキテクチャが正しかったからだと思います。そこはけっこう、自信がありました。
自分がつくったプロダクトの中で、もっとも美しいと言えるものです。
井上
レガシーなシステムに依存関係もなく、きれいに出来たということですね。
安武
最初は設計していくの、めんどくさいんですよね。ひとつの機能を達成するのに、単にコードを書けばいいところをシステムのモジュールを切るとか、こだわってやったんです。
一方で、上手くいって逆に問題おこしたのが、R-mailですね。最初は1カ月で1000万通くらい送るのに問題を起こしたので、徹底的に再設計して、ほんとにきれいなアーキテクチャが出来たと思いました。ところがきれいに行きすぎて際限なく送ってもスケールするので、ひと月に10億通くらい送るようになったんです。
井上
はあ!すごいですね。
安武
それで楽天のメルマガはスパムだと騒がれて。システムの制約があったら、送る方ももっと考えたのかもしれません。スケーラリビリティが効きすぎて、日本のメルマガの半分以上を楽天が送るようになってしまいました。今はだいぶ減らす努力をしています。
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