ECサイトで活用できるAIとは?AI搭載検索エンジンの事例も紹介
昨今のECサイトは、商品の多様化や情報量の増加に伴い、ユーザーが求める商品や情報を短時間で見つけ出せる検索機能の重要性が高まっています。そこで注目されているのが、AI技術を活用した高度な検索エンジンです。
従来のキーワード検索では、キーワードと商品情報が完全一致しないと目的の情報に辿り着きにくいという課題がありました。一方、AI搭載検索エンジンでは自然言語処理や機械学習を活用することで、ユーザーの曖昧な表現や文脈を理解し、最適な情報や商品を提示できます。
この記事では、ECサイトで活用できるAIとは何か、またAI搭載検索エンジンについて事例を交えて詳しく解説します。
目次
1. ECサイトの顧客体験を変える「AI」とは?
AIとは、英語の「Artificial Intelligence」の略語であり、日本語では「人工知能」を指す言葉です。
AIは一般的に、人間が脳内で行うような思考や言語の理解・認識、推論、計算といった知的行動をコンピューターに行わせる技術を指します。しかし、AIの明確な定義はなく、研究者によって解釈が異なるのが現状です。AIの定義が明確でない理由として、人間が「知能」や「知性」をまだ定義できていないことが挙げられます。また、AI研究は基礎分野から応用分野まで領域が幅広く展開されており、すべてを包括して定義するのが難しいことも理由の1つです。
AIは人間の感情や常識などをすべて正確に理解できるとは限らないため、万能な技術とは言い切れません。しかし、特定の領域では人間以上の知能を持っていることから、世界中のさまざまな分野で活用され始めています。
1-1. 注目を集める生成AI
生成AI(ジェネレーティブAI)とは、さまざまなコンテンツを生成できるAIのことです。生成AIについても明確な定義はありませんが、一般的には「学習能力があり、さまざまなコンテンツを新たに生み出せる技術」が生成AIと呼ばれます。
従来のAIと生成AIの大きな違いは、データを出力する目的です。従来のAIの目的が決められた行為の自動化なのに対し、生成AIは学習データを元に新しいコンテンツを創造します。
生成AIが生み出すコンテンツは、テキストや画像、動画、音声などさまざまです。加えて、生み出されるものの精度の向上が目覚ましいことから、生成AIは注目を集めています。ただし、生成AIは誤った情報に基づいてフェイクニュースを生み出す可能性があるなど、リスクや課題も残っている技術です。
1-2. AIの得意分野・苦手分野
AIはまだ進化の過程にあるため、ビジネスで活用する際には得意分野と苦手分野の両方を把握することが重要です。
AIが得意とするのは以下のような分野です。
- 規則性があるデータの学習、分析、処理、識別
- 一定のルールに基づいた単純作業
- データに基づいた数値予測
- 言語処理、翻訳
- 画像認識
- 音声認識
上記のように、膨大な人的リソースが必要になる上、ヒューマンエラーが発生しやすい作業については、AIを活用することで効率アップにつながる可能性があります。
一方、AIはクリエイティブ領域の作業や感情認識、倫理的判断や複雑な意思決定、少ないデータに基づいた推論などは苦手です。特に、人間の気持ちを汲み取ったり、空気を読んだりすることはAIにとって難しいため、心理カウンセリングなどの分野においてはAIの適用は限定的になります。
2. ECサイトに導入できるAI搭載検索エンジンとは?
AI搭載検索エンジンとは、AI技術を活用して、ECサイトなどにおける検索機能を高度化するツールのことです。
従来の検索機能では、検索キーワードと商品情報が一致しなければ、求める商品に辿り着けませんでした。一方、AI搭載検索エンジンは自然言語処理や機械学習を活用し、ユーザーが入力した曖昧なキーワードや文脈を理解できます。その結果、的確な商品や情報を提案するようになります。
また、AI搭載検索エンジンを導入すれば、ユーザー一人ひとりの購入履歴や行動データを基に、パーソナライズされた検索結果を提供することも可能です。ユーザーにとっての利便性が向上することで、売上アップにもつながるでしょう。
2-1. AI搭載検索エンジンの活用場面
AI搭載検索エンジンは、ECサイト内で以下のような活用場面があります。
商品数が多く目的の商品を探しにくいサイト内での検索 |
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AI搭載検索エンジンは、複雑な商品カテゴリーや多数の商品が存在するサイト内で有効です。ECサイトの検索エンジンでAIを活用すれば、曖昧なキーワードやスペルミスを補正し、ユーザーの意図を正確に理解できるようになります。加えて、関連性の高い商品や人気アイテムを優先表示すれば、ユーザーが必要な情報へすぐにアクセスできるよう支援することも可能です。 AI搭載検索エンジンは、BtoCECサイトはもちろん、難解な用語が使われやすいBtoBECサイトなど多種多様な業種のサイトで利用されています。 |
顧客やカスタマーサポートが使用するFAQサイト内での検索 |
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FAQサイトでAI搭載検索エンジンを活用すれば、ユーザーの質問内容を解析し、最適な回答を提示できるようになるでしょう。例えば、類似した質問や関連トピックを提案する機能もあります。 また、AIの学習機能によって、ユーザーの利用状況を基に検索精度が向上することも期待できます。結果として問い合わせ件数が減少し、サポートの効率化やオペレーターの技量による差の平準化にも寄与するでしょう。 |
3. AI搭載検索エンジンを支えるテクノロジー
AI搭載検索エンジンを支えているテクノロジーは、「自然言語処理」と「機械学習」の2つです。以下ではそれぞれのテクノロジーについて、概要や特徴を紹介するので、一度確認しておくことをおすすめします。
3-1. 自然言語処理
自然言語処理とは、人々が日常的に用いる「自然言語」をコンピューターに処理させる一連の技術のことです。自然言語は人間が日々自然に使っている日本語や英語などの言葉のことで、人と人とのコミュニケーションで用いる話し言葉や書き言葉も自然言語に含まれます。一方、コンピューター言語や数式など、人為的に作られた言語は「人工言語」と呼ばれます。
近年、SNSの発達やビジネスコミュニケーションツールの普及によって、旧来では紙でやりとりが行われていた情報がデジタルデータに置き換わりました。結果としてAIが収集できるテキストデータの量が増大し、自然言語処理の精度向上につながっています。
加えて、言語処理研究開発における汎用言語モデルが進化し、人間が作るような自然な文章を生成できるモデルも登場しました。自然言語処理技術の発達によって、より効率的な音声検索や会話検索も可能になっています。
3-2. 機械学習
機械学習とは、読み込んだデータをコンピューターが自動で学習し、データの背景にあるルールやパターンを発見するデータ解析技術のことです。そのため機械学習では、学習に利用可能なサンプル数が増加するにつれ、その性能が向上します。機械学習は「Machine Learning(ML)」とも呼ばれ、人工知能(AI)を構成する要素の1つです。
また、ECサイトで活用できるAI技術として、機械学習を活用したベクトル検索にも注目が集まっています。
従来のキーワード検索とは異なるベクトル検索とは、商品の特徴や説明をベクトル(多次元空間内の点)として表現し、その距離を基準に類似性を測る検索です。ユーザーが入力したキーワードをベクトル化し、商品のベクトルと比較することで、「意味的に関連性が高い」商品を見つけ出します。
キーワードが商品情報に含まれない商品もマッチさせることができ、曖昧なキーワード・自然文検索で力を発揮するのがメリットです。その反面、ベクトル変換ロジックは柔軟・細やかな調整が難しく、検索キーワードによっては不適切な結果を返す可能性もあります。
機械学習の手法は主に以下の3つです。
- 教師あり学習
読み込んだデータから「入力と出力の関係」を学習させ、入力データから出力データを推計するための手法です。代表例としては、天候や価格、売上予測などが挙げられます。 - 教師なし学習
一連の入力データからパターンや構造を見つけ出すための手法です。与えられたデータを基に、コンピューターが自分でパターンを見つけるのが大きな特徴となっています。 - 強化学習
最初からデータがあるわけではなく、システム自身が試行錯誤しながら精度を高めるための手法です。
4. ECサイト内検索にAI搭載検索エンジンを導入するメリット
ECサイト内検索にAI搭載検索エンジンを導入するメリットとしては、以下のような内容が挙げられます。
- 顧客体験をパーソナライズできる
AIを活用することで、個々のユーザーの嗜好や購買履歴に基づいてパーソナライズされた商品提案が可能になり、顧客に快適で魅力的なショッピング体験を提供できます。精度が高い商品提案は売り上げの向上に直結するため、ECサイトには欠かせない機能と言えるでしょう。 - 業務効率化・運用負荷を軽減する
AI搭載検索エンジンを導入すれば、検索結果の商品の並び順を手作業ではなくAIで最適化できるようになります。繰り返し行われる作業をAIで自動化することで、従業員の作業負担を大幅に減らし、EC業務効率化や運用負荷の軽減を実現できる点が大きなメリットです。 - トレンド・季節性を自動で反映する
AIを活用すれば、過去だけでなく直近の売れ筋データも分析し、自動でトレンドや季節性に応じた検索結果を出力できます。最新トレンドを把握できれば、トレンドに基づいた商品開発やマーケティング戦略の立案にもつなげられるでしょう。AIの活用の仕方によっては、高精度な需要予測から発注管理の効率化を目指すことも可能です。 - サジェストによく検索されるキーワードを表示する
AIによる機械学習を活用して、サイト内でよく検索される・購買につながっているキーワード候補をサジェストでき、需要の把握や分析に役立てられます。 - 顧客満足度とロイヤリティを向上できる
AIによるパーソナライズされた商品提案や迅速な対応を通して、顧客満足度やブランドへのロイヤリティを高められる点も大きなメリットです。顧客満足度が高いECサイトは、顧客の再訪問やリピート購入も促進されるでしょう。
以上のように、AIはパーソナライズや業務効率化、需要予測など、さまざまな面でEC事業を支援します。これらのメリットを生かせば、ECサイトは競争力を高め、持続的な成長を実現させることも可能です。
5. ECサイト内検索におけるAI検索と通常のキーワード検索の違い
ECサイト内検索におけるAI検索と通常のキーワード検索には、以下のような違いがあります。
- 検索に用いる語句の解釈方法
通常のキーワード検索では、例えば「カレー 作り方」と検索した場合、「カレー」と「作り方」の語句を含むWebページを探します。一方、ユーザーがカレーの作り方を知りたがっていることを理解し、より関連性が高い検索結果を提供するのがAI検索の特徴です。 - 検索結果の順位づけ方法
通常のキーワード検索では、検索語句が商品情報や説明文にどれだけ含まれているかを基準に順位づけを行います。一方、AI検索はユーザーの行動データやトレンドなども考慮し、動的に順位づけを行います。通常のキーワード検索に比べて、AI検索のほうがより適切な検索結果を表示できるシステムと言えるでしょう。 - 検索結果の改善を行う能力
AI検索は継続的に機械学習を行い、改善する能力を備えています。ユーザーの検索行動やクリックしたリンク、滞在時間、時期や地域なども考慮し、検索結果を常に最適化できるのがAI検索の強みです。AI検索はより使いやすい検索エンジンに進化し、個々の好みに応じた検索結果の表示や、需要に合った商品の情報を広告として表示することも可能になります。
6. ECサイト内検索におけるAI搭載検索エンジンの活用事例
AI搭載検索エンジンの導入を検討する際には、実際にAI搭載検索エンジンを導入した事例を参考にするとよいでしょう。以下では、ECサイト内検索におけるAI搭載検索エンジンの活用事例を6つ紹介します。
6-1. ミスターマックスオンラインストア(株式会社ミスターマックス様)
ミスターマックスオンラインストアは、福岡県福岡市に本社を構える株式会社ミスターマックス様が運営するECサイトです。ミスターマックスの実店舗と同様に、日用品から家電製品まで豊富な商品ラインナップを取り揃えています。
ミスターマックスオンラインストアでは、AI搭載検索エンジンの導入により、検索UX向上につながっています。キーワードを予測表示するサジェストでは、AIの機械学習を利用し、サイト内でよく検索されたり購入につながっているキーワード候補を表示。特に文字入力が面倒なスマートフォンサイトでの検索UXを改善し、ユーザーが目的の商品にたどり着きやすいよう補助しています。
6-2. 中川政七商店オンラインショップ(株式会社中川政七商店様)
中川政七商店オンラインショップは、創業から300年以上の歴史がある奈良の老舗、株式会社中川政七商店様が運営するECサイトです。オンラインショップでは商品が暮らしの中で使用されるイメージにくわえて、ものづくりの背景まで載せており、工芸の魅力を一層深堀りすることが可能です。
中川政七商店オンラインショップでは、AI搭載検索エンジン導入により、AIが季節性やトレンドを予測し、検索結果に反映させています。ユーザーの検索行動をAIがリアルタイムに学習し、季節やトレンドに応じて最適な商品を上位に並べるため、手動更新をかける事なく、運用負荷の軽減につながっています。また、商品だけではなく特集や読みものの検索も同時に行うことが可能になっています。
6-3. JRE MALL(東日本旅客鉄道株式会社様)
JRE MALLは、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)様が運営する公式通販サイトです。JRE MALLは総合ショッピングモールであり、鉄道グッズや全国の特産品、鉄道体験イベントの予約、ふるさと納税など、幅広い商品やサービスを取り扱っています。また、JRE MALLでショッピングをするとJRE POINTが貯まる・使えるのも魅力です。
JRE MALLでは、AI搭載検索エンジンの導入により「JRE MALLショッピング」をはじめとする3サイトの商品を同時検索が可能になりました。JRE MALLの各サイトで個別に検索する手間が省けるほか、AIによるトレンドの自動反映によって目的の商品をスムーズに見つけやすくなっています。
6-4. P.D.R.オンライン(株式会社ピーディーアール様)
P.D.R.オンラインは、愛知県名古屋市に本社を置く専門商社・株式会社ピーディーアール様の公式ECサイトです。P.D.R.オンラインでは、日本全国の歯科医院および歯科技工所に向けて、歯科用医療機器や材料の製造・輸入・販売を行っています。
P.D.R.オンラインでは、AIサジェストや絞り込み機能の拡充により、検索のしやすさと目的の商品の見つけやすさが向上しました。また、商品と「歯ブラシの選び方」などのコンテンツを同時に検索できるため、お役立ち情報を参照しながら商品を選べる点も魅力です。
6-5. ainoma(株式会社Vソリューション様)
ainomaは、株式会社Vソリューション様が運営するバロー公式ネットスーパーです。スーパーマーケットバローの店頭で販売されている食材や日用品を購入でき、当日注文・当日お届けも可能となっています。
生鮮食品・食材ECは表記ゆれが起きやすい特徴がありますが、ainomaはAI搭載検索エンジンの活用により表記ゆれに対応、トレンドを自動反映する検索結果で検索精度向上につながっています。また、ネットスーパーでは店舗や曜日ごとに取扱商品が異なり、店舗別・曜日別に検索対象を変更することが必要ですが、検索エンジンの活用によって、店舗・曜日在庫対応を実現しながら高速に検索結果を返却しています。
6-6. DAISOアプリ(株式会社大創産業様)
DAISOアプリは、株式会社大創産業様が運営する、100円ショップチェーンDAISOの公式アプリです。全国展開されているDAISOのうち、近くの店舗を探したり、欲しい商品の在庫状況を店舗ごとにリアルタイムで確認できるのが特徴です。
DAISOアプリでは、検索窓に入力された文字列に対して、関連するカテゴリーやキーワードの候補をAIが予測し表示するサジェスト機能が搭載されています。ユーザーが過去に検索したキーワードも表示されるため、リピート検索がより容易になっています。また、トレンドやよく検索される商品をAIが検索結果に自動反映させるため、ユーザーが目的の商品を見つけやすいのもポイントです。
まとめ
AI検索を導入することで、ECサイトの顧客体験は一段と向上し、運営側にとっても日々の運用負荷を大幅に軽減できます。膨大なデータをもとにリアルタイムでトレンドや季節性を捉え、ユーザーごとのニーズに合った商品や情報を自動で提案してくれるため、既存のキーワード検索よりも高い精度でユーザーを目的のページへ導ける点が特長です。
さらに、EC際との問い合わせページにもAI検索を導入すれば、問い合わせ件数を削減し、サービス品質の均一化を図ることも可能になります。EC業界において、AI搭載検索エンジンの導入は、今後より顧客のニーズに合ったECサイトを構築する上で重要と言えるでしょう。
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